出棺の際に釘打ちをしていますが、葬儀社さんが金槌で叩く音を聞くたびに、故人が暗い世界に閉じ込められるような感じがします。どうしてあんなに冷たいことをするのだろうと疑問を感じています。

A.釘打ちはどうしてもしなければならないものではありません。ご遺族が選択できる行為です。

出棺の釘打ちは「死霊を封じるために」行うとされた地域もありましたから、死は穢れではないのだからやらなくてもと考える人も増えてきています。しかし、また別の言い習わしもあります。別れるのは辛いがその辛さをこらえて、お別れするために近親者が真心をこめて行うというものです。

亡くなった人と別れることは近親者にとっては痛みを伴う辛さ、悲しみです。小石で釘を打つというのは、その辛さに追い打ちをかけるものかもしれません。しかし、死別の辛さを身体に味わうことにより、死の現実に正面から向き合うということであるならば、それはマイナスではなくプラスの役割を果たすでしょう。

釘打ちはどうしてもしなければならないものではありません。ご遺族が選択できる行為です。昔のように棺を担いでいくのではなく霊柩車に乗せて運ぶのですから、遺体が飛び出さないためという実用的理由は今ではありません。